私がカボチャじゃなかったら
今週のお題「ハロウィン」
ニュースによると、今年は軽トラが横転したらしい。
画面の中で馬鹿騒ぎする大衆を尻目に、チャンネルを変える。
ハロウィンは嫌いだ。
単純に騒がしいのが苦手だからということもあるけれど、思い出したく無いことを思い出すから。
どうでもいいけど。
あれは数年前のハロウィンの日。
アルバイトの帰り道、まさに仮装パレードの帰りらしい若者の集団とすれちがいざまに言われた言葉。
「48点」
酔っ払いに何か言われたな。とその時はあまり気にせず帰宅したけれど、後になってふつふつと怒りが湧いてきた。
なぜ私がアホみたいな格好した男にバカにされなきゃいけないのか。はあ?なめんないい加減にしろテメエらこの野郎50点満点中だろうな?!
とイライラしながらその日は眠りについた。
翌朝になるとそんなことはもう忘れていたのだが、
何かが上手くいかない時や失敗した時
呪いのように頭に浮かぶのは決まってその言葉だった
「48点」
これで私がせめて50点だったら
60点だったら、もし80点だったら?
そう思わずにはいられない。
こうしてなんてことはない、どうでもいいはずの記憶が 立派なトラウマとなったのだ。
とはいえあれから数年
私もさすがに大人になった。そろそろ48点の呪いから抜け出さなければいけない。
今年のハロウィンは早めに仕事を切り上げて
家でおいしいかぼちゃ料理など食べようと思う。
余談だけど ハロウィンの合言葉は
お菓子くれなきゃイタズラするぞ。という意味が有名だけど
本来はお菓子に限らず
●●しないと、さもなくば××するぞ。
という語源が由来らしいです。
48点の私へ
Trick or Treat
女子大生がストーカー旅行に行った話②
私は行動力のある女なのですぐにホットペッパービューティーからアイリの働く美容室を予約した。もちろんアイリ指名で。
また行き帰りの航空券もとった。
(いや飛行機で行く距離かい)
わくわくする。柄にもなくWANIM●とか聴きたい気分だ。進め君らしく心踊る方~つって
ただこれだけは言いたい。私はアイリに会って何かを言おうとか、嫌がらせをしようとかいう気持ちは一切ない。ただ一人の客として美容室に行き、実物のアイリを一目見たいだけだ。
ストーカー旅行当日。
朝イチの便で私は東京へ。ヒアウィゴー
空港に到着し予約の時間にはまだ時間があったので、インスタで流行っているフルーツサンド屋さんなど行き、普通に楽しんだ。
そしてついにその時が。
約二年の時を経て、これまでSNSを通じてしか見られなかったアイリのご尊顔を拝見することができる。
「いらっしゃいませー」
結論から言うと、アイリは普通に可愛らしいお姉さんだった。
強いて言うなら二重顎なのが気になった。
(何様のつもりか)
これまで見てきた写真の中で一番盛れているものと、一番写りの悪いもののちょうど中間という感じだ。
そしてここから私の地獄が始まる。
“おうちはどの辺りなんですかぁ~?”
“……ええと、この辺です!近所なんでふよ”
噛んだ。
“え、でもこの辺商店街だから住めるとこ少なくないですかぁ?”
“いやあ目立たないけどあるんですよ!本当犬小屋くらい小さい家なんで!アハハハ!”
地獄だ。そういえば私の長所は素直で嘘がつけないところだった。
しかしアイリは挙動不審な私に対して怪訝な態度をとることなく、気さくに話しかけてくれた。
気持ちの良いシャンプーに癒されて緊張が解けたところで、今度は私の方から質問してみる。
“美容師さんって大変じゃないですか?立ち仕事で営業が終わった後も練習とかするんですよね?休みも少ないイメージです。”
“まあそれはそうですねえ。でも仕事とはいえ好きなことなので、嫌になったりとかは無いですよ”
なんて素晴らしい人なんだろう。
週数回のバイトですらめんどくさがっている自分が恥ずかしい。SNSを見た印象だけで、頭の悪そうな女だろうと決めつけていたことを心からお詫び申し上げたい。
実物のアイリは、頭が悪そうどころか気さくで優しく、むしろ上品な印象さえあった。
オブラートに包む行為を一切省けば『ほぼ陰毛』とも言えるほど傷んだ私の毛先の状態を、絶妙な言葉選びで表現し的確なケアを教えてくれる様子は、プロという他なかった。
そして実際めっちゃ髪がサラサラになった。
私は思った。
完敗である。
「また来てくださいね。ありがとうございました~」
私は帰り際にアイリにお礼(とお詫び)を言い、なぜか少し晴れやかな気持ちで空港に向かった。
彼女に対して抱いていた偏見やコンプレックスは、もうここに置いて帰ろうと思った。
こうして私のストーカー旅行は終わったのだけれど、不思議なことに一年近く続けていたネットストーキングもその日を最後に終わった。
それは実物を見たことでSNSを見る必要が無くなったからか、思ったより良い人だったのでコソコソ覗くのはやめようと思ったからか、人として完敗していると気がつき自分と比べることが嫌になったからか、どれかは分からない
(多分最後)
けど実物を見ることで相手への興味が薄れたり、良い意味で諦めがつくということは絶対にあると思うので、ネットストーキングを拗らせた方は一度本人に会ってみるのもありかと思います。アクションを起こさないこと前提でね。
まあ何が言いたいかというと
SNSのアカウントは鍵をかけて
個人情報を載せるのは極力控えて楽しみましょうね。
女子大生がストーカー旅行に行った話①
2年間ほど、元彼の元カノをネットストーキングしていた期間があった。
ネットストーキングとは要はネットを通じて特定の人物につきまとう行為。
そう聞くととても悪質なもののように思えるけれど、SNSが普及している今、多少なりとも似たようなことをしている人は多いと思う。
だって好きな男性や彼氏の元カノやら周囲の怪しい女がどんな投稿をしているのか、どんな写真をアップしているのか気になりません?気になりますよね?お願いだから気になると言ってください。
自分で言うのもあれだが、私はネットストーキングが大の得意だ。何の自慢にもならないことは分かっている。
でも本当に得意なので、探し始めるとかなりの確率で何かしらのアカウントや情報を見つけることができる。友達はマッチングアプリで男と知り合うたびにSNSのアカウントを探して欲しいと頼んでくる。人をなんだと思っているのか。
ということで ここではネットストーキングのノウハウを、ではなく
私がネットストーキングを拗らせた結果
本人に会いに行った時の話をしたいと思う。(やばい)
元彼、ハヤトは大学時代に付き合っていた年上の会社員で、何かと派手な男だった。
社交的な性格、広い交友関係、男らしい顔立ちと体型。
直接は聞いていないけど髪型や服装からして、多分EXIL●を尊敬していたのだと思う。
決してバカにしているわけではない。
何はともあれ、インドア派でコミュ障の私とは真逆のタイプだ。
チャラチャラしているように見えて、意外と真面目で優しい(ように見えることも稀にあった)ところが好きだったのだが、そんなハヤトが過去のことを話す際には必ず出てくる女の名前があった。
元カノ、アイリである。
アイリはハヤトが学生時代に付き合っていた元カノで、同棲までしていたがアイリの浮気が原因で別れたらしい。
元カノ特殊捜索部隊隊長としては黙認できない。
「未練なんてあるわけがないしラインもブロックしてる。」と話すのを、しゃらくせえなと思いながら聞いていた。
ハヤトはよく喋る男だったので、アイリの個人情報はダダ漏れだった。
OK Google!彼女に元カノの話をする意味とは?
さて、名前、出身校、入部していた部活、現職業。
十分すぎるほどの情報量だ。準備は整った。
未だかつてない集中力を発揮し、開始4分でアイリのFacebookを、25分でツイッターを、その後インスタグラムを特定することに成功した。
暇かよ。他にやることないのかよ。と思った方に伝えたい。
暇だったのである。
アイリは一言で言えばギャルだった。
投稿の8割が友達との写真か自撮り。
こういう人種に限ってSNSを本名でしている。また鍵をかけていない確率が高い。パリピ万歳。
明るい髪色に濃いめのメイク。認めたくないが可愛らしい顔立ち。ハヤトとはお似合いだったんだろうなと胸が痛んだ。
それから私は自傷行為のごとくアイリの投稿を遡った。何度も言うが暇だったのだ。
“今夜もクラブ❤️みんなつぶれろ🍸😂”
“また年確されたあ😭まぢ童顔つらい”
“後輩ちゃん達とご飯💓同い年にしか見えないとゆわれる。身長のびろ🙇♀️”
はいはいパリピパリピ。しかも童顔と低身長をステータスにしているタイプときた。
私のコンプレックスを的確に攻撃してくる。
効果は抜群だ。
瀕死の重傷を負いながらも、アイリには新しい彼氏がいることがわかった。地元を離れ上京し美容師として働いていることも。
ハヤトとはもうなんの関係もないことが分かったが、私の親指は休むことを知らず、ストーキングは続いた。
すると気づいたことがあった。
写真によって顔が結構違うのである。自撮りか他撮りか、角度や照明の明るさなどにより、顔面偏差値の推移がすごい。
また画像修正のためか周囲の時空が歪んでいるものもある。
面白くなってきた。
これだからネットストーキングはやめられないってばよ!
彼氏の元カノが美人orブス どちらが良いか、色々な意見があるとは思うけれど、私は断然ブス派だ。(どうでもいい)
ちなみにハヤトとは、数ヶ月後なんとなく気持ちが冷めて別れた。
しかしその後も、アイリのSNSをチェックする行為は止まらなかった。
彼氏の元カノとしてではなく、アイリ本人に興味が湧いてしまったのだ。我ながら心底気持ち悪い。
相変わらず写真によって変わる顔面偏差値に、どれが本当の顔か突き止めたい一心でストーキングを続けるうちに、とうとう職場まで突き止めてしまった。自分が怖い。
そして私は決意した。
これは実物を見に行くしかない。
続きます
女子大生がストーカー旅行に行った話② - きっと最後に笑うのは